そうです。
ユーミンというと、あの松任谷由美さんですね。
コンサート、というわけではなく、
金沢工業大学の学祭で開催された公開講座の講師としての出演です。
数日前、知り合いから、「ユーミンが来るぞ」 との情報をもらい、
「ぜひ、行きたい!」 と楽しみにしていたイベントです。
入場無料。
ただし、先着500名しか、会場に入れない。
会場に入りたいのなら、10:00頃から並ばないと難しいだろう、とのこと。
開演は13:00~なんですけどね。
でもでも、どうせ見るなら、近くで見たい!
……ということで、久しぶりに開演待ちの列に並んでしまいました。
何かを得るために1時間も2時間も並んで待つような情熱は
もうとっくの昔に消え失せた……と思ってたんですが、
タダで、ナマで、ユーミンを見ることができるなら、話は別。
気合、入れます。
と言いつつ、500名なんて少ないし、ムリかな……なんて半分諦めていたんですが。
10:30頃に会場に着いた時点で、既に200人ほど並んでました。
思ったよりも少なかったのが、ちょっと意外。
でも、ユーミンが来る、と言っても、別に歌うわけではないし、
まるまるトークだけ、というイベントなら、そんなものかな、と思いつつ、
ガンバって待ち続けました。
(行列待ちは久しぶりなので、
文庫本などの待ち時間用アイテムを持参するのを忘れていたのは失敗だった……)
そして、無事に会場入り。
ワタシに情報を教えてくれた友人は、家を出るスタートダッシュが遅れたようで間に合わず、
別館に設置された大型スクリーンで同時中継された映像を見るしかなかったようです。
でも、他の友人達は、12:00頃にやってきて、まんまと会場入りを果たしたようで、
実のところ、そんなに気合入れて早い時間から待たなくても大丈夫だったみたい。
ちっ。
講座の途中では撮影できないので、せめて開演前のプロジェクターを。
ケータイ画像なので、ちょいと美しくありませんが。
若い人達もそれなりにいましたが、
やっぱり30代、40代ぐらいの人達が圧倒的に多かったです。
世代的には、当然といえば当然。
そして、ユーミン登場。
いつ見てもエネルギッシュな方です。
さて、講座の内容自体は、「歌が生まれるとき」 というテーマで
司会の立川直樹さんとユーミンのトークの合間に、これまでのライブ映像を流したりして、
なんとなくフィルム・コンサート的なノリであったことは否めませんが、
生ユーミンを間近で見ることができたので、よしとします。
常に進化し続ける、ユーミンの歌。
数年前に作られたビデオクリップは、今みても古さを感じさせず、
その頃から、新しいことに積極的にチャレンジしてきたユーミンの姿勢が窺えました。
特に、「シャングリラ」 の映像は圧巻でした。
ワタシは見たことなかったので。
歌と、音楽と、映像、人間の動き、そういった個々のアートが融合した集大成……という感じです。
逆に言えば、それらの表現方法に、実は境界なんてないのかもしれない。
そんなふうにも感じました。
あらゆる要素をミックスさせ、その中から新たなものを生み出し続けていく。
そこに、松任谷由美という人の魅力があるんだな……なんて思った1時間半で、
こちらも元気をもらうことができました。
やっぱ、すごい。ユーミン。
それにしても、この人は、本当に年齢を感じさせませんね。
いつ見ても若さが溢れているし、何よりも、キレイ。
理想的な年の重ね方、とは、こういうことを言うんでしょうか。
久しぶりに、昔のユーミンのCDを引っ張り出して聞きたくなりました。
「シャングリラ」のDVD、買おうかな……。
たった今、新たに始まったTVドラマ 「ブラッディ・マンディ」 を見終わりました。
どうせ、原作モノを TV 的にアレンジして、つまんなくしてくれたんだろうな……と
勝手に思いつつ、番宣 CM がちょっと面白そうだったので見てみたんですが……。
予想外に面白かった。いや、かなり。
ドラマを見ていて、CM 待ちがもどかしく思ったのは久しぶり。
ワタシは本来、テロリスト物が苦手なんですが (むしろ、嫌い)、
ちょっと目ウロコですね。
テロリスト物というと、大抵は警察や軍隊 VS 犯人の駆け引き、裏の読み合いで
ストーリーが展開していくんですが、
このドラマに関しては、主人公が高校生というのもあり、
その少年の周囲で事件が広がっていくため、かなり見やすいです。
ストーリー展開もそうですが、撮り方が何とも面白い。
たぶん、固定カメラではなく、全編通してハンディで撮っているんではないでしょうか。
手撮りならではの揺れが、何となく不安感を煽ってる感じ。
珍しく、早く次回が見たい、と思わせるドラマでした。
楽しみです。
……なんてことを書いている途中、
ニュースで、ロス疑惑の三浦・元社長が自殺した、との報道が。
ビックリです。
最近、また話題になっていた三浦さんですが、
三浦さんという人は、ワタシの中では、かなりふてぶてしい人、というイメージがありました。
勝手なイメージではありますが。
それこそ、自殺なんて絶対しないような。
だから、なおさら驚きました。
一度は無罪になった身。
自由を拘束されたことに絶望したのか。
再逮捕への抗議なのか。
それとも、全てがもうどうでもよくなったのか。
真意はわかりません。
三浦さんが何か起こすたびに大騒ぎしていた日本のマスコミですが、
結局、ロス疑惑も、白黒つかないまま終わりを迎え……。
本当に無罪だったのか。
それとも、実は有罪だったのか。
この先ずっと、真相は闇の中。
足の長かった事件だけに、なんともスッキリしない、フクザツな心境なのは
ワタシだけではないのでは?
タカギもタカギだ。
女の力など知れたもの。
とっとと跳ね除けてしまえばよいものを。
激しく動くと関節が堪えるのだろう、地味に足掻きながら、
それでも女に押さえ込まれているタカギに向かって、男B の憤りが向けられる。
しかし、女はタカギの背の上で、腕の手首と肘をきっちり掴んでいる。
何でもないように見えるが、女がその気になれば、
逆手に取った腕をさらに引き上げて、今以上の痛みをタカギに与えることも可能だろう。
ヒトの身体の間接は、曲がる方向にしか曲がらない。
その方向とは逆に力をかけられているのだから、
できるだけ無理な力を逃がすためには、大人しく押し付けられているしかないのだ。
タカギもそれを本能的に悟っていた。
自慢の怪力は、すべて物言わぬ地面に向けられている。
それ程までに、女の固めは完璧だった。
しかも、ご丁寧に、横を向いたタカギの顔の首元を、女は膝でさらに押し付けている。
タカギが動ける余地は、ますます少ない。
格闘技の試合であれば、
「ギブ、ギブ!」 と声が上がりそうな、そんな光景。
しかし、タカギは決して自らその言葉を吐くことはないだろう。
シンプルで、流暢で、素早く、しかも効果的な攻撃。
さらに言うなら、
女自身は、まったくと言っていいほど自分の力を使っていない。
攻めてくるタカギの勢いを利用して腕を取り、捻り上げただけだ。
あり得ない。
目の前の情景を、まだ信じることができず、もう一度、男B は自分に言い聞かせた。
もともとタカギは短気で浅墓な男である。
一緒に組むことが多くなった最近になって、ようやく、男B はそのことを知った。
身内とはいえ、その浅墓なる気短かさ故に、扱いに気を使わざるを得ないタイプの人間だった。
そして、今もまた。
ひょっとしたら、最初から腕力に訴える腹づもりでいたのではないか。
そう思わせるほど容易く、あっけない程簡単に相手の思惑に乗り、
タカギはバトル・モードに突入した。
自分の制止など、さらさら聞く気はないようだった。
予想外だったのは、相手の女がタカギの圧に微塵も屈した様子を見せないことだった。
この女が誰なのか、脅しつけてまで調べるような命令は受けていないが、
タカギに怯えた女が素直に答えてくれれば、それはそれでよし、と思わないでもなかった。
しかし、答えるどころか、女は逆ギレ状態だ。
しかもキレながら、どこか余裕のある表情で自分達を見下していた。
挙句の果てに。
タカギは、まだ組み伏せられている。
このザマだ。
弄ばれている。
同僚の無様な姿を見せ付けられ、男B の胸中に歯がゆい思いが沸き起こる。
簡単な仕事だと思っていたのに。
男B はため息をついた。
こんな予定じゃなかった。
タカギは倒れ、女は手を緩めず、残りの2人は見物客に徹している。
今回の仕事の仕切りを任された男B としては、微妙な立場にある。
この場を、どう片付けるべきか。
自称・頭脳労働者は、しばし思案した。
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家の窓を開けると、
外を歩くと、
キンモクセイの香りが漂う、今日この頃。
ウチの庭にも咲いてます。
こんなに小さい花なのに、なんという香り。
芳香剤などで、キンモクセイの香りのものがありますが、
自然の花には到底かないませんね。
さてさて。
ついこの前まで花がチラホラ咲いていた我が家の庭も、
気がつけば、いろいろな植物が実をつけてました。
ムラサキシキブ。ウチのマミーのお気に入り。
食べたくなるほど、きれいな実。
食べないけど。
ホワイト・チョコボール……ではなくて、シロシキブ。
ムラサキシキブの紫は、上品で慎ましやかなイメージ。
こちらの白は、ピュアで可愛い。
他にも、名前は知らないけど、いろんな実がなってます。
寒い冬が来る前に、植物は実を蓄え、
そして、春になると芽が出て、葉が出て、花が咲き、また実をつける。
誰かに 「そうしろ」 と教えられたわけでもないのに、
ずっと大昔から、そんなふうに続いてきたサイクル。
ウチの庭も、来年の春には、きっとまた花だらけになっていることでしょう。
やがて、かわし続けるのにも飽きたのか。
タカギの足元がよろめいた隙をついて、女は自分の顔の横に突き出された腕を払った。
そこからだった。
男B が女の動きに違和感を感じたのは。
女は足を一歩前に踏み出し、タカギの腕を左手で掴んだ。
そして、片方の手でタカギの脇腹を突いた。
そんなに強く、ではない。ごく軽く。トン……ぐらいの勢いで。
少なくとも、男B には、そう見えた。
だが、タカギは身体を折り、そのまま地面に膝をついた。
女はその隙を逃さない。
タカギの手首を掴んだまま捻ると素早く背後に回り、もう片方の手で、次は肘を取った。
そのまま、タカギの腕を背中から遠ざけるように、グイと真上に引き上げた。
ああ、あれはちょっと、いや、かなり痛いんじゃないだろうか。
タカギが思わず、うぉっと叫ぶのを耳にしながら、
男B は自分の腕が取られているような錯覚を起こし、眉をしかめた。
捻られて表側と裏側が入れ替わった腕を、
さらに普段とは異なる方向、つまり後正面に向かって無理やり曲げられようとしているのだから。
そして、腕が天を突いて身体から引き離されるにつれて、
もう一方のタカギの肩は、おのずと地面へ傾く体勢にならざるを得ず、
前のめりになっていくところを、あっけなく地面に引き倒された……というわけである。
その動作の全てが、
流れるように、
吹き抜けるように、
一瞬で行われた。
タカギの巨体が崩れた後、その場は沈黙に支配された。
不気味な、そして不穏な沈黙である。
あり得ない。
たった今起こった一連の光景を何度も頭の中で繰り返しながら、声に出さずに呟く。
殴る、蹴る、というありがちな手段なら、まだ判る。
少なくとも、つい先程タンカを切った女のキレっぷりから考えると、
そういう直接的な攻撃を仕掛けんばかりのノリと勢いがあった。
いや……やはり判らない。
何しろ、華奢な女 vs 大の男、というタイトルマッチそのものが
まるで子供の頃に見ていた、出来の悪い TV アニメのようで現実味がない。
さほど苦労もなく、しかも息すら乱れさせずにタカギを組み伏せる女の姿は、
男B にとって悪夢のようなものだった。
離れたところから2人が対峙する姿を見ていた他の2人、男C、D はといえば、
事ここに至っても動かず、面白いものを見たような表情で、軽い蔑みと好奇の視線を向けている。
勿論、前者はタカギに、そしてもうひとつは、女の方に。
男B は、男達を軽く睨んだ。
睨まれた方は、揃ってそっぽを向く。
心の声が聞こえるようだ。
『加勢しろなんて言うなよ。だったら、お前が行けばいい』
……どれだけ嫌われてるんだ、タカギさん。
男B はため息をついた。
いや、俺も決して好きではないけれど。
それにしても、少しぐらい手を貸したっていいだろうに。
そう思いつつ、男B 自身もそんな素振りを見せようとしないのは、
腕に自信がないから、という控えめな理由だけではない。
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◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
諛左が事務所を慌てて (『慌ててなどいない』 と本人は否定するだろうが) 出た時間より、
遡ること、およそ47分。
暗くて沈んだ、誰からも好意的に表現されることがない例の噴水がある空き地では。
目の前で起こっている光景に目を奪われ、
他称・男B が、言葉も発することも出来ずに、ただ突っ立っていた。
そこには男が、倒れていた。
うつ伏せになり、低い呻き声を上げながら地面に顔を押し付けて……
いや、押し付けられて。
タカギである。
やや貧弱な感のある男B に比べれば、背も高く、ゴツゴツした岩のような重量感を持つ
その男が、今、その体格の半分にも満たないような女に片手を後ろ手に取られ、
無様に這いつくばっていた。
自らを頭脳労働者と公言して憚らない男B は、
周囲の仲間ほどにはマーシャル・アーツに長じていないものの、
しかし、一通りの武芸についての知識は持っている。
その男B の目から見ても、女は奇妙な動きをした。
奇妙……違う。
素早いのだ。
一瞬。
そう、本当に一瞬のことだった。
呻くタカギを前に、男B は頭の中で、数分前に見せられたシーンを何度もリプレイした。
女の毒のある挑発に乗せられ、頭に血が上ったタカギは、
浅墓にも、相手を腕力で打ち倒すことで優越感を取り戻そうとしたようで、
有無を言わさず女に殴りかかろうとした。
しかし、女はそれを容易くかわした。
体勢を崩しかけたタカギは、目を剥いて、身を翻すと再度女に向かっていく。
それも、かわす。
攻める。
また、かわす。
一見、攻勢にいるタカギではあったが、女には触れることもできなかった。
決して大仰な動きではない。
前進するタカギを避けながら、少しずつ後ろに下がってはいるが、
女の足取りはあくまで軽く、ほんのわずかな不安定すら見られない。
こういうのを、いわゆる 『ノレンにウデオシ』 と言うのだろうか。
まさに、Beat the air だ。
目の前の光景とは遠いところで、男B はぼんやりと場違いなことを考えた。
短慮ではあるが、タカギは決して腕っ節の弱い男ではない。
しかし、性格と同様、単純な一直線の攻撃で相手を沈めようとするタカギの拳の道筋を、
女は何度か対する内に、明らかに見切っているようだ。
先程までの喧嘩腰に反して、女の目は冷静だった。
風のように、かわす。
空気は滞っている。
2人の周囲でのみ、風が流れる。
そこだけ、時間が流れている。
シャリッ……。
動くたびに、アスファルトの上の砂利が軋む。
静かな夜半、響くのはその音と、
タカギが息を切らして喘ぐ声、そして空しく宙を切る拳の音だけである。
女の呼吸は乱れてもいない。
なんだ、この女。
それが男B の正直な感想である。
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