3つの人影が、互いに微妙な牽制の視線を投げかける中、
不穏なサイレンの響きだけが、次第に大きくこだまして空に響いていた。
厄介事の前兆を示すその音色に、最初に我に返ったのは諛左だった。
「事務所に戻るぞ、J。こんな時にお前がフラフラしてるのはマズい」
「……わかってる」
ため息の J。
無意識に、先程打ち付けた頭の傷に触れた。
頬に残る乾いた血の跡が、ざらりと不快な感触を指先に残した。
確かに、こんなザマを誰かに見られたら、怪しまれることは間違いない。
J の仕草を目に留めた諛左が、その顔の血筋に気づいたが、
ここで何が起こったか、だいたいの察しがついたのだろう、
J とは異なるニュアンスのため息を小さくついただけで、何も言わない。
諛左は阿南へと顔を向けた。
「アナム、あんたも来てくれ。
事情は判らんが……どうやら、あんたも無関係でもなさそうだ」
阿南は無言のまま肩をすくめ、すでに足早に歩き始めている2人に続いて、
小さな空き地を後にした……。
その後。
運よく誰にも見咎められることなく、何とか3人は無事に事務所にたどり着き、
J と阿南は、そのまま千代子の部屋に押し込められた。
そして、J の手当てを終えた千代子がコーヒーポットを運び込み、
部屋を出て階下のオフィスへ戻った、ほぼ10秒後、予想通り、不良刑事が現われた。
それから約1時間、J は不穏かつ不毛な階下の会話に聞き耳を立て続け、
現在もその真っ最中、というわけである。
阿南と諛左が知り合いであった、という事実に、
驚きこそすれ、それ以上の特別な感慨を J は覚えなかった。
強いて言うなら、
千切れてバラバラになった世の中であっても、やはり世間は狭かった、というところだろうか。
本名、アナム・ジャフナン。
数年前、マセナリィから足を洗ってニホンへたどり着いた。
それまでの名を捨て、帰化によって 『阿南 -アナン-』 と名乗り、
幾人かの要人の警護職を経て、やがてハコムラに落ち着いた……。
薄暗がりの中、コーヒーを飲みながら J が聞くともなしに耳を傾けた、
それが、素っ気ないくらいシンプルな、阿南のプロフィールである。
それを聞いて、やっぱりね、と J は呟いたものだ。
「やっぱり、とは?」 阿南が問う。
「ハコムラんちの前で初めてあんたを見た時、雰囲気が諛左に似てる、と思ったんだ。
やっぱり、元マセナリィってヤツは、どっか共通した空気感があるんだよね」
J の言葉に対して、阿南はどこか皮肉めいた微笑を返しただけである。
そして、唐突に尋ねる。
「あんたとユサは、どういう関係なんだ?」
「……仕事仲間」
「仕事?」
「何でも屋」
J の答えに、阿南は怪訝な顔をしてみせる。
ガードしろ、との指示はあったものの、
どうやら J の職業については、麻与香から聞かされていなかったようだ。
→ ACT 7-10 へ
ちょっとした新事実が発覚したりなんかしてます。
あの人と、あの人が、実は知り合いだった、という事実です。
ほんとに、ちょっとしたことですが、
これによって、また話が長くなるような気がしたため、
ここでそれを出そうか出すまいか、かなり悩みました。
結局、出したけど。
間が開きすぎてしまった感がありますが、また少しずつ続きを掲載していきますので、
またよろしくお願いいたします。
気づけば、ブログのカウンターが、いつの間にか 5,000 HIT を超えてました。
たくさんの方に訪問していただいて、ありがたいことです。
ブログを通じて、いろいろな方ともお知り合いになれました。
飽きずにお付き合いいただいて、ホントにありがとうございます。
今年の1月から手探りで始めたブログですが、
つらつらと好き勝手なことを書き続け、もうすぐ1年が経とうとしています。
よく続いたなあ。
基本、飽き性のワタシなんですけど。
友人や知り合いには、自分がブログをやっていることをほとんど打ち明けていないのですが、
(いまだに、気恥ずかしさが消えない……)
そろそろ公表しようかな。
それはともかく。
年末で慌しい今日この頃です。
年賀状も作らなきゃいけないし。
もろもろ片付けなきゃならないこともあるし。
クリスマスやら忘年会やら、楽しいお誘いもあるし。
今年も、あと半月足らず。
あっという間です、1年が過ぎるのなんて。
来年はどんな年になるのやら……なんてことを考えるには、まだちょっと早いかな。
「それにしても」 しばしの沈黙の後、阿南が口を開く。
「ミス・フウノが……」
「千歩譲って 『フウノ』 と呼んでも良しとする」 と、J が阿南を遮る。
「でも、『ミス』 は取ってくれ。
センタリアンのあんたに 『ミス』 なんて呼ばれると、なんかバカにされてるような気がする」
「別にバカにしてはいない」
「いいから」
「わかった、怒るな……つまり、何だ……フウノが、あいつと知り合いだとは思わなかった」
「それは、こっちの台詞」 J はちらりと阿南に目をやる。
「まさか、あんたと……諛左が古い顔見知りだったとはね」
それは、J にとって突然の、そして意外な事実だった。
勿論、阿南にとっても。
J はつい先程の、空き地での一幕をぼんやりと思い出す。
ブラック・スーツの一団が去った後、疲れ果てた J の目の前に、突然阿南は現われた。
ハコムラの警護人が、何故ここに? という驚きと、それに対する答えもないまま、
しばらくの間、2人は睨み合っていた。
遅ればせながら諛左が駆けつけたのは、そうやって2人が無言のまま対峙していた、
そんな微妙な空気の真っ只中だった。
「諛左」
現われた諛左に視線だけを向け、どこかホッとしたような調子で小さく J が呟く。
その呟きに、阿南が少し身じろぎした。
「ユサ……?」
J から目を離し、阿南は諛左に身体を向けた。
その表情には、何かを思い出そうとしている様子が窺えた。
一方、やっぱりここにいたのか、と J に声をかけるよりも早く、
予期していた以外の人影が目に入るやいなや、諛左は素早く全身に警戒を走らせた。
しかし、その人影から発せられた言葉に、今度は諛左が驚きの表情を浮かべる。
「……バウル・グランデの戦線にいた、ユサ・カイトウか?」
意外なところで名を呼ばれ、諛左が立ちすくむ。
「……誰だ?」
答えはない。
無言のまま、街灯の光を受けて暗闇の中にうっすら浮かぶ阿南の顔を見つめ、
やがて、諛左は探るように相手に尋ねた。
「アナム……アナム・ジャフナンか……?」
答えずに阿南は薄く笑った。
「なんで、あんたが?」 と、諛左。
「何故、お前がここに?」 同時に阿南。
「お前ら……知り合い?」 と、2人を見比べながら、J。
その場にいた3人が、それぞれ疑問を投げかけた。
どの問いにも、答えはない。
数秒間の沈黙。
誰もが、自分以外の2人の顔に、交互に視線を走らせた。
→ ACT 7-9 へ
とりあえず、ヘコみからは脱出。
気分なおしに、昨夜の月を UP。
いきなり雨が降ったり、風が吹いたり、と、相変わらずアヤフヤな天気ですが、
夜は晴れたので、久しぶりに夜空にカメラを向けて見ました。
上の写真は東の空に上った、お月さま。
で、数時間後、
西の空に沈んでいく、お月さま。
同じ面だけど、模様の天地が逆になってます。
地球の周りを回りながら、お月さま自身も自転している、という証拠。
そろそろ、窓を全開にして写真を撮るのはツライ季節だけど、
冬の冷たい空気は、決して嫌いではありません。
冴え冴えとして、他の季節よりも澄んでる感じ。
でも、夜中に窓から外に向けてカメラで撮影している姿を
万が一、近所の人に見られたら、アブナイ人だと誤解されないだろうか……なんて、
ちょっとビクビクしながら撮ってます。
久しぶりに月を見たら、しばらく続いていた無気力状態から抜け出せそうな気がしました。
……という矢先に、オペラを見損ねたんだけどね。(まだ言ってる)
ちぇ。
そう、12月12日ではなく、11日。
誰がなんと言おうと、11日……であれば、ホントによかったんですが。
金沢歌劇座で公演されるオペラ、プッチーニの 「ラ・ボエーム」。
正確には、「公演された」 です。
昨日。
19時から。
今日の時点で、公演終了してます。すっかり。
これを見たくて、1ヶ月以上前に前売り券を買い、
楽しみに待ち続け、
しばらく実家に戻ったりして日々の生活に明け暮れ、
「よし、今日はオペラだ!」 と、久しぶりのウキウキ気分で金沢に戻り、
ついさっきアパートについて……。
さて、公演は何時からだったかな、
急いで支度をして、道が混む前に出ないとね、とか思いつつ、チケットを見たら。
……ん?
……なんか、覚えのない日付なんですけど。
11日……?
それ…………昨日ですよね。
……。
……。
……ウソでしょ?
……覚え間違い? まさか。1日、遅かった?
……。
……。
もっかい見てみた。
やっぱり11日。
よくよく見たけど、11日。
ルーペで覗いたけど、スミの網点がアップで見えただけで、やっぱり日付は11日。
……。
……。
ショック。
超ショック。
1日、ズレてた。
12日だと思い込み、今日に照準を合わせてきたワタシ。
今、チケットを前にして愕然としています。
何で間違えたんだろう。
買った時から闇雲に12日だと思い込んでました。
「12月」 という文字を 「12日」 と見間違えたんでしょうか……。
いや、理由なんて、もうどうでもいい。
ワタシの目の前にあるのは、
予定していたオペラ観劇は、今から24時間も前に既に終わっていて、
未使用のチケット (ちなみに、A席 4,000円。S席にしなくてよかった……)と
ペラッペラのチラシが1枚、手元に残されただけ……という、現実。
もう、がっかり。
チョーがっかり。
めっさ、がっかり。
久しぶりのウキウキが、台無しってヤツ?
……はあ。
ちなみに、「ラ・ボエーム」 というのは、どんな内容かというと、
『プッチーニの流麗な旋律が奏でる、19世紀イタリア・オペラの傑作』
……と、
このチラシに書いてありました。
『貧しくとも心優しき若き音楽家たちとヒロインが織りなす青春群像』 だそうです。
それも、
このチラシに書いてありました。
チラシって、便利ですねー。
実際に公演を見てなくても、簡単なあらすじが判るんだからー。
チラシがあって、よかったー。
……って、んなワケ、あるかーいっ。
ちゃんと自分の目で見たかったわーいっ。
もう、ホントに、がっかり。
ヘコむわー。
自分の思い違いが原因なだけに、
なおさら……ヘコむわー。
ここ最近、何かをやろうという意欲に欠けていて、
必要最低限のこと以外には頭を働かせたくない、という状態に陥っています。
ブログが滞っているのも、そのせいで、
ブログ更新は勿論のこと、他人様のブログを訪問するのも億劫だし、
さらにはネットやメールすら面倒……という始末。
自分のブログも久しぶりに見たので、
プロフィールのところに貼り付けてあるブログパーツの emo が
また変わっていることに、初めて気がつきました。
いつの間に変わったんだろう。
ロボットタイプからマネージャータイプになってるし。
しかも、「NO が好きなすがすがマネージャー」 とかニックネームつけられてるし。
それはともかく。
ネットだけではなく、テレビを見たり、本やマンガを読んだりするのも気が乗らない。
外出するのも面倒くさい。
掃除も洗濯も。(いや、これは一応やるけどね)
うーん、無気力。
今、このブログを書いていながらも、それすら結構ツライ。
実は、こういう状態はワタシにとってそれほど珍しくなく、
今までにも年に2、3度は、こういう時期がありました。
理由もなく、全くと言っていいほど何もする気が起こらない。
何も、です。
英語で言うなら、not at all ってトコ? って、言ってる場合じゃない。
こんな時は、いつも時間さえあればダラダラしっぱなし。
ボーッとしてるうちに、1日が終わった……なんてことも。
これじゃイカン、と思いつつ、
もう1人のワタシが、別にいいじゃん、と横槍を入れてくる。
で、結局、またボーッと。
とはいえ、あまり心配はしてませんけど。
これまでもそうだったけど、
何かきっかけさえあれば、急にテンションがあがっていつもの状態に復活すると判っているので。
まあ、あと数日はグダグダしそうですが。
それにしても、いきなり寒くなりました。
ここしばらくは雨がちで、ちらっと雪も降ったし、
いよいよ本格的に冬突入か? と、内心ウンザリ気味。
このウンザリ気分が、今のやる気なしなし状態に拍車をかけているフシも否めません。
スキーはもうやめたし、スノボもやらないワタシにとっては、
冬という季節は、寒いだけで何もうれしくありません。
それに、雪が積もるし。
積もったら、雪すかしが待っているし。
雪をすかさないと、車も出せないし。
(ていうか、「雪すかし」 って、方言? 正確には、「雪かき」 か?)
道は凍るし、滑るし、何より、歩きにくいし。
……なんてことを考えるだけでも、さらに気鬱度アップ。
ああ、面倒。
そろそろタイヤもスタッドレスに替えないといけないけど、これも面倒。
タイヤ交換は、いつも近くのガソリンスタンドにお願いしていますが、
そこまで出向くのが面倒。
「どこでもドア」 があればいいのに。
と、本気120%で考えている今日この頃。
どらえもーん。
助けてー。
「やる気ビーム」 とか、出してー。