長い。ほぼ丸一日じゃないっすか。
アクセス一ケタなんて、久しぶりです。
ランキングもゲキ下がりしたサイトがあり、ちょいと悲しい。
やっぱブログは見てもらってなんぼ、ということでしょうか。
でも、これで、混雑する時間帯に起きるアクセス不具合はなくなるのかな?
ワタシも書き込みできなくて、非常に困ることがありましたから。
ようやく復活したらしいので、ぱーぷる更新しました。
とりあえず、日記としては今日は特に書くこともないけれど、
外出した際に、とある施設の待合室で、
太陽光が床に反射して美しかったので、つい撮影。
レースのカーテンの陰と、光の反射に照らされる床の傷具合が、なんかイイ感じ。
なんてことはない、身の回りにある風景の一つでした。
そんだけ。
阿南が時折見せる倦怠の表情を何とか解きほぐそうと常々努力しているのが、
笥村邸の前で阿南の傍らの位置を占めている部下の仁雲(ニグモ) だった。
『考え過ぎない方がいいですよ、阿南さん』
今ではこの台詞は仁雲の口癖になっている。
事あるごとに仁雲はこういって阿南をなだめるのだ。
褐色の肌とやや明るい茶色の髪を持つ仁雲は、
ニホン名ながら南国人種の血を引く生まれだった。
血筋のせいか、性格は阿南よりも遥かに陽気な方である。
年は30前だが、子供のような表情のせいで実際よりも若く見える。
強面で同僚にも避けられがちな阿南と、それに反して愛想がよく人好きのする仁雲は、
正反対の性格でありながら何故か馬が合っていた。
仁雲はかつて某国の軍隊で職業軍人として真っ当に勤務していた。
しかし、クーデターによる内乱が起こったことで、硝煙の道に進まざるを得なかった。
数年後、呆気なく内乱は終結し、
呆気なく軍は解体されて、仁雲は呆気ないほど簡単に無職の身になった。
『その日のメシにありつくこともできなくなった訳です』
仁雲は笑いながら阿南に言ったものだ。
結局、仁雲はマセナリィになっていろいろな国を渡った。
その後、何度目かに体験した内乱が終結を見る頃には、
硝煙の匂いに辟易していた仁雲は
稼いだ報酬を注ぎ込んで、ニホンへのパスポートを手に入れたのだ。
それまでの名前を捨て、ニホンに帰化して「ニグモ」を名乗り、
ともかく、数ヵ月後には笥村邸の警護役の一人に収まった。
そんな自らの境遇に充分に満足していることは、本人の言葉通りである。
『自分はラッキーです』
仁雲は笑顔で言った。
泥や血の染みとは無縁のスーツ姿で、食うに困ることもない。
しかも、自分の経歴を生かした職業でもある。
その上、雇い主は政財界に名を轟かせる笥村家なのである。
これは、この上なくラッキーなことではないか?
仁雲の表情は常にそう語っていた。
阿南自身が個人的に抱えている胸中の葛藤、
つまり 『争乱バカ』 である自分を捨てきれないでいるのに対して、
仁雲は明らかに阿南と意見を異にしていた。
仁雲は、現在自分が置かれている状況を幸運であると公言して憚らない。
常に無常観に苛まれている阿南にとっては、少なからず複雑な心境を抱かせる存在であった。
→ ACT 3-5 へ
阿南は、ふと頭をめぐらせて、背後に視線を送った。
そこには、ハコムラ・コンツェルンを象徴する大邸宅がそびえている。
見る者に前時代的な印象を抱かせる巨大な構えの扉。
それは、阿南を押し潰すかのように存在感を誇示している。
さすがにニホンで一番名を知られている男だけあり、
不穏な理由で笥村聖の屋敷に忍び込もうとする人間は決して少なくなかった。
誘拐目的、企業スパイ、テロ、ストーカー、狂信的な信奉者……
あらゆる可能性が考えられる中、
今まで大きな事件が持ち上がらなかったのは、ひとえに優秀な警護力があったからであろう。
阿南自身が危険を察知して活躍したことも、2度や3度ではない。
しかし、その鉄壁の警備の一端を担う阿南にとって、
雇い主や世間の評価の高さは、さほど自らの精神的な快感にはつながらない。
むしろ、阿南の心は自嘲に似た感情に満ちている。
毎日毎日、自分はこの尊大な扉の前で番犬となっているわけだ。
怪しい者に唸って吠えて噛み付いて、報酬という名の餌をもらっている。
そんな自らの日々を思い、そして在りし日と今を比べることによって、
阿南の心は、やはり倦んでいくのだ。
阿南の心にくすぶっている感情は、
盛りを過ぎた老人が抱くような過ぎ去った日の充実感を懐かしむ感傷に似ている。
世界が向かう方向が変わりつつあるのなら、自分もそれに合わせていく方が利口なのだ。
あの黒髪のニホン人が言っていたように。
人の生死が世界を動かす、と本気で信じていたあの頃、
時代の雰囲気に支配されていたあの頃の自分の方が、恐らくは異常なのだ。
しかし。
頭で考えて理解できることと、自分自身の感情とは必ずしも一致しない。
むしろ背反することの方が多い。
世間と折り合いをつけて生きていくことは阿南にもできる。
だが、心の底には湧き上がる寂寞とした感情はどうにもならない。
それに気付かない振りを続けていくのは、阿南にとって大きな苦痛だった。
阿南は再び目を背後の屋敷へと向けた。
現在、この屋敷の中に笥村聖はいない。
聖の年若い妻・笥村麻与香によると、
『主人はプライベートでしばらくニホンを離れているの。当分帰ってこないわ』
とのことであった。
麻与香の言葉を聞いて、阿南の上司に当たる壮年手前の警備主任が、
驚いたように尋ねたのを阿南は他人事のように見ていたものだ。
『……護衛もつけずに、ですか? 自分は何も聞いていませんが』
『プライベートだって言ったでしょ。
あなた達みたいにデカい男が貼り付いていたら、逆に目立ってしまうじゃないの』
『しかし』
尚も言い募る警備主任とは裏腹に、
麻与香は退屈な会話を打ち切るように手を振ると、背を向けて歩み去った。
警備主任は、その後ろ姿をしばらく見ていたが、
やがて何事もなかったように部下達をいつもの警備配置に送り込んだ。
しかし、阿南は、主任が小さく舌打ちしたのを聞き逃さなかった。
権力者の気紛れに振り回されるのは今に始まったことではないが、
阿南には主任の心情がよく理解できた。
結局それ以来、神殿を守るガーディアンの彫像さながら、
一日中、主不在の屋敷の前で、訪れる人間相手に誰何を繰り返している阿南である。
→ ACT 3-4 へ
母の日のプレゼントが、母の日に完成です。
そう、庭の花木の写真集。
一昨日から自宅のプリンターで出力したんですけど、
いやー、大変だった。
何がって、乾燥させるまでが。
調子に乗って、山ほどプリントしてしまったので、
部屋中に写真が侵食。
部屋がこんな状態になるのも、そうはないので、何故か記念撮影。
こんな感じ。
これは部屋の片隅ですが、全体的にこんな感じ。
ここも。
デザイン用の模型くんも、居心地が悪そうです。
本の上も有効利用。
結局、数えてみたら80枚。プリントし過ぎ。
なかなか写真を選べなくて、もういいや、全部プリントしちゃえ、ってんで
その結果です。
で、昨日アルバムを買ってきて、
今日写真を収めて、完成。
結局、2冊になりました。
ふう。
我ながら、なかなかいいデキだと思います。自画自賛。
今回は普通のL 判ではなく、大きめの 2L判でプリントしたんですが
写真が大きくなると、良く見えるから不思議です。
その中でも特にワタシがお気に入りの数枚が、こちら。
花の王者、牡丹ですね。
この前咲いた、今シーズン最後の一輪です。貫禄勝ち。
グラジオラス(たぶん)。ソッポ向いてますけど。
背景のイネの緑に映えて美しかったので、後ろ姿ですが撮影しました。
名前わかりませんケド。紫の小粒の花がかわゆらしいです。
これも名前わからない。儚げな感じがお気に入りです。
花だけではありません。葉っぱがきれいだったので。
これは、狙ってマクロでアップで撮ったもの。イメージっぽくなりました。
さてさて、これで後はマミーに渡すだけです。喜んでもらえるといいなあ。
本当は、こんな写真だけではなくて、
今まで自分なりに感じていたこと、
いろいろ伝えたいことを、きちんと言葉で言えればいいんでしょうケド。
例えば。
機嫌が悪いときに素っ気ない返事をしてゴメンナサイ。
一緒に買い物に行くのをメンドくさがってゴメンナサイ。
あまり会話がなくてゴメンナサイ。
すぐ怒ってしまってゴメンナサイ。
時々、うっとうしいな、と思ってしまってゴメンナサイ。
親孝行じゃなくてゴメンナサイ。
親不孝でゴメンナサイ。
勝手に会社を決めて、勝手に会社を辞めてゴメンナサイ。
それでも 「あんたの好きなようにしなさい」と言ってくれてゴメンナサイ。
お父さんが寝たきりの時に、なかなか家に帰れなくてゴメンナサイ。
それでも 「無理して帰ってくることないよ」と気を遣わせてゴメンナサイ。
お父さんがいなくなった時、一人にしておいてゴメンナサイ。
……なんか、謝りたいことばかりですね。うーん。
口に出して言いたいけど、なかなか言えないことばかり。
でも、言わなくても許してくれる。
どんなにこっちがツッパっても、すべてを受け入れてくれる母の愛。
偉大です。ホントにそう思います。
感謝してもしつくせません。そして、とてもかないません。
普段から、感謝しながら接することができればいいのに
それができない、まだまだ未熟者のワタシです。
こんなアルバムだけで気持ちが伝わるとは思いませんけど、
喜んでもらえればHAPPY。
いやー、なんか照れくさいっす。まいった、まいった。
『考え過ぎることはないさ』
同じ時期にニホンへ渡ってきたマセナリィ仲間の一人が、阿南に言ったものだ。
『 完全な平和、とは言い切れない。
だが、ともかく世界は何とか落ち着きを取り戻そうと努力しているように見える。
そうなれば、マセナリィの出番は今後ますます縮小されていくだろう。
お前も俺も、その流れに乗り損ねないようにすればいいだけのことさ 』
その男は黒く光る鋭い瞳と黒髪のニホン人だった。
自分にとっては里帰りというところだな、と笑っていた。
そうなのかもしれない。
阿南は実際にニホンを目の当たりにして、男の意見を認めざるを得なかった。
小奇麗で整えられた街並み。
それゆえに硬質で冷たい印象をもたらす都市空間は、
近い未来には、ニホンだけではなくトーン・ワールド全体に広がる予想図なのだろう。
ため息とも吐息ともつかず、
曖昧に息を吐いて天にそびえる建造物を見上げたことを、阿南は覚えている。
平和なニホンではあったが、阿南は不思議と職には困らなかった。
そこそこハイレヴェルな階級 - クラス - のマセナリィに属していた彼は、
数多の選択肢の中で、結局、要人宅の警護というポジションに納まった。
そして、今ではニホンを動かす笥村一族の邸宅をガードする、という大役を獲得することで、
皮肉にもマセナリィであった頃の実力を証明することになったのだ。
しかし実のところ、阿南自身は今の自分の位置づけに、そう満足はしていなかった。
不平があるというわけではない。
報酬は申し分なく、それに見合うだけの働きをしているという自負もある。
ただ、それだけでは満たされない部分が、
自分の心の奥底に潜んでいることを阿南は気付いていた。
時々彼は自らに問いかける。
仕立ての良いスーツを身につけ、いい部屋に住み、なんら不自由のない生活。
何かが違うような気がする。
自分がいるべき所は、ここか?
つい数年前までは、
銃弾が飛び交い、明日の命の保障もない血なまぐさい場所にいた自分。
今はどうだ。
他人を守るためにのみ存在する自分が、ここにいる。
生き抜くことが目標だったあの頃の緊迫感を失った自分、『 生 』 への執着を欠いた自分が。
誰かを守ることが無意味だと断言するつもりは阿南にはない。
それはマセナリィも同じことだ。雇い主が 『 国 』 か 『 個人 』 かの違いに過ぎない。
そんなことは阿南にも判っていた。
ただ。
以前自分がいたのは、
自らが戦い、生き残ることが勝利につながる、ある意味シンプルで明瞭な世界だった。
今は違う。
敗北はないが、勝利もない。
ガードするべき対象を守り抜くことが勝利なのだ、と言えないこともない。
だが、そこには自分が生きている実感が皆無である。
結局、自分は血に餓えた、ただの争乱バカなのだろう。
阿南の結論はいつも諦めに近い形でそこに落ち着くのだ。
→ ACT 3-3 へ
ACT 3 - A good dog seldom meets with a good bone -
やや肌寒い10月の風が吹き抜ける、センターエリアの高級住宅街ブロック。
華麗な外観の家々が立ち並ぶ中、ひときわ目を引くのが、
ハコムラ・コンツェルンの総帥・笥村聖が美貌の妻と住まう大邸宅である。
その豪奢な屋敷には、現在、警護の役目で雇われている人間が数人いる。
その代表格である阿南(アナン) という男は、多くを語らない人間だった。
だが、語らずともその風体から、男の過去を想像するのは困難なことではなかった。
いかつい顔立ちや暗い髪の色はアジア系の出身を思わせる。
しかし、その予想を裏切るかのように瞳は氷にも似た薄いブルーに輝き、
光の辺り具合によって、ブルーの中に冷酷な銀の色味が映える。
長身で2m近くあるため、大概の人間は彼に見下ろされる立場にある。
威圧的な存在感が全身から滲み出ている。
頬にはかなり以前に受けたと思われる銃創があった。
その傷跡が、阿南をしてどこか危険な男という印象を見る者に与えていた。
そして今、阿南は笥村邸の門前で、同僚の仁雲(ニグモ)と共に
不審な者が屋敷に入り込まないように目を光らせる役回りを与えられていた。
阿南はマセナリィの出身である。
彼自身は自らそれを語ることはなかったが、
語るまでもなく、その体格や傷を目にした人間の9割近くが、恐らくはそう予想するであろう。
数年前まで、彼は遠く離れた戦地で兵士として雇われ、
今でこそまともな職についているが、当時は硝煙と血の匂いの中で日々を送っていた。
『大災厄』 の終焉後も、その爪痕が完全に癒えるまでには時間を必要とした。
世界の一部では見せかけだけの平穏が声高に叫ばれ、
その一方で、内乱やクーデターが後を絶えず、戦乱の空気が各地でくすぶり続けていた。
世界から国家という単位が薄れつつある中、
傭兵 -マセナリィ- という働き口が、争うという目的の元に重きを置かれていた、そんな時代。
完全な、そして健全な復活を迎えるには
世界は未だある程度の騒乱期間を必要としていたのだ。
マセナリィは、そんな時代の過渡期に産み落とされた鬼子のように、世界各地で繁殖し続けた。
阿南も、その一人である。
だが。
一度混沌の地を離れてしまえば、マセナリィなど何の役にも立たない。
そのことを阿南は、ここニホンに来て否応なく思い知らされることになった。
ニホン。
当時、疲れ果てた心を抱くマセナリィ達は
最終的な避難所として、戦乱とは無縁の国・ニホンを選ぶことが多かった。
結果、ニホンは多国籍・無国籍化していくことになるのだが。
しかし、ニホンはそれまで阿南が過ごしてきた国とは、あまりにも別世界の国だった。
人があふれ、建物があふれ、雑然とした空気が其処彼処に漂う国。
人々は銃の撃ち方を学ぶ代わりに、知識と教養を学ぶ。
規律ではなく、礼儀作法を身につける。
辺りに広がるのは濃い緑の密林ではなく、銀と灰色の入り混じった建造物だ。
真逆の世界で育った阿南にとっては、すべてがカルチャーショックだった。
→ ACT 3-2 へ