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蝶になった夢を見るのは私か それとも 蝶の夢の中にいるのが私なのか 夢はうつつ うつつは夢


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つい今しがたのこと。

コンビニに行こうと思って、玄関で靴を履いていると、
ドアの外から物音が。

パチッ……パチッ……とも聞こえるし、

ライターをもてあそんでいるような、時計の針のような

カチッ……カチッ……という音にも聞こえた。


何の音?

ドアの覗き穴から外を窺ってみても、人影はなし。

覗き穴から見えないところで、アパートの他の住人が、外に出て涼んでいるのかな……
と思ったけど、その音以外には何も聞こえず、人の気配もない。

ついさっき見たコワイTV番組の余韻もあって、ちょっと気味が悪くなり、
外に出るのは、もうちょっと後にしよう……と部屋に一時退却。


10分後。

誰かがいたとしても、さすがにもういないだろうと思い、
玄関口で耳を済ませてみると……。

やっぱり、カチッ……カチッ……と音がする。

何だ?


相変わらず人がいる気配はなく、
かなり気になっていたので、思い切って外に出てみた。


そしたら。


セミがいた。

玄関先からちょっと離れた、コンクリートの上で引っくり返っていた。


カチッ……カチッ……と聞こえていたのは、
ジッ……ジッ……という、セミの鳴き声だった。

夏の暑い夜、ひっそりとアパートの物陰で、
もうすぐ寿命が尽きようとしているセミの姿。

末期の鳴き声にしては、
余りにも控えめで、余りにもひそやかな、ジッ……ジッ……という声。

地上に出てから、ほんの数日間という短い命を精一杯鳴いて鳴いて、
最後の最後に、こんなふうにひっそりと、
引っくり返りながらも、か細い声で鳴き続けるセミの姿は、
ちょっと切ない。
いや、かなり。


コンビニから帰ってきたら、
セミはもう鳴いていなかった。


とある夏の夜、
玄関の外で、ひとつのいのちが消えた、そういう物語。
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