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蝶になった夢を見るのは私か それとも 蝶の夢の中にいるのが私なのか 夢はうつつ うつつは夢


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「それにしても」

ドアノブに手をかけて、思い出したように麻与香は J を振り返った。

「こんなダウンエリアの片隅で、
その日暮らしでくすぶってるアンタの姿って、ナンか不思議だわ」

「別に不思議なことはないと思うけど。分相応ってヤツ」 

「あら、そうかしら?」

麻与香は妙に挑戦的な視線を J に送った。
J の胸の内に嫌な予感が走る。

「フウノ……あたし、調べさせたって言ったでしょ、アンタのこと。
で、いろいろ分かっちゃったのよね」 

「……何を」 

「ん? だから、いろいろ、よ」 

「麻与香、相変わらず回りくどいよ、言うことが」 

「だからね」

麻与香は、知らない人間から見れば極上の笑みを浮かべた。
J にとっては極悪な笑み。

「フウノ、アンタさ……センターエリアに大きな人脈、持ってるでしょ」 

「……」 

「だから、こんな事務所で生計を立てていく必要なんて、ないワケじゃない?
そこが不思議、って言ってるのよ」 

「……何が言いたいのさ」 

「んー、だからね、アンタの後ろにいる 『誰か』 さんのこととか……。
いろいろ知ってるってワケよ、あたし」 

「……」

J は麻与香を見た。
見られた相手は微笑みながら J を見返す。

J は手にしていた煙草を乱暴にもみ消した。

J は記憶の中にある 『笥村麻与香』 と名付けられたファイルのページをめくった。
そこにはカレッジ時代に得た様々な情報が無造作に書き記されている。
「不可解」
「パラノイア」
「魔性」
等々、好意的とはいえない単語の群れの中に、
今、新たに 「要警戒」 という言葉を加える必要があるらしい。

ハコムラの名を手に入れた時から、この世に溢れる情報のほぼ全てを手中にした女。
自分の事をどこまで調べたのか、J にとっては非常に気になるところであった。
知られても構わないこと、そして知られたくないことが、J の頭の中をぐるぐると駆け巡る。

麻与香の権力に思いを巡らせる J は、
目の前で艶然と足を組む女に油断のない目を向けた。

「そんなコワい顔しないで。嫌なこと言ったかしら」 

「……別に」

嫌がると分かってて言ったくせに。この女は。
J は不機嫌さを隠すつもりもなく、新しい煙草に火を点けた。
麻与香の方には目も向けない。



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