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蝶になった夢を見るのは私か それとも 蝶の夢の中にいるのが私なのか 夢はうつつ うつつは夢


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サフィラは物も言わず側にあった椅子に腰掛けると、声をかけようとしたサリナスに 「何も言うな」 と視線で語り、気を静めるようにおもむろに呟き出した。

「分かっている。分かっているんだ。皆に悪気がないのはよく分かっている。そうだ。皆は純粋に私の結婚を祝ってくれているだけなんだ。民人に罪はない。よく分かっているんだ。これほどに慕われていることを私は喜ぶべきなんだ。ましてや腹を立てるなんぞ、以ての外だ。分かっている。分かってはいるんだが、しかし」

言葉を切ってサフィラはガタンと椅子から立ち上がり、部屋の中を右往左往し始めた。

「私だって人間だ。腹が立つもんは立つ。しかし、善意に溢れた連中が相手では、ただ耐えるしかない。それが王族たるものの努めだ。ひいては国民に慕われているという誇りでもある。民衆の心を裏切ってはいけないのだ。それにしても、ああ、腹が立つったら……何だ、サリナス」

部屋の壁にもたれて笑いをこらえている青年に向かって、サフィラはきつい目を向けた。

「何がおかしい」

「いや、別に。苦労しているなと思って」

「ふん、お前に分かるもんか」 ふてたように言ってサフィラは再びどっかと椅子に座り込んだ。
「大体、お前の住家がこんな街中にあるから悪い。もう少し人が少ないところに住めばいいものを」

明らかに八つ当たりである。サリナスが呆れたように言った。

「お前の都合で人の住処に文句を言うな。しかし本当に久し振りだな。俺はまた、とっくに結婚してしまったのかと思ってた」

「喧嘩を売るつもりなら喜んで買うぞ」

ゆらりと椅子から立ち上がるサフィラを押し止めて、慌ててサリナスが訂正する。

「冗談だ、冗談」

「気を付けろ。冗談で命を落とすことだってある」

「相当苛立っているようだな、お前」

「そう見えるか? 式を半月後に迎える花嫁の心境ってのは、案外狂暴なものなのかもしれんな」

「いや、それはお前の場合だけだろう」

「やっぱり喧嘩を売られているような気がしてならないんだが」

「気のせいだ。何で俺がお前に喧嘩を売らなきゃならない?」

「……お前、面白がってるだけだな」

「分かるか?」

「サリナス、殴ってやるからここに座れ」

「お、やめ、やめろっ、サフィラ。テーブルが倒れるっ」

「やかましい!」

凄まじい音が小さな家の中に響き渡る。
見事に足が折れ、真っ二つに割れて飛び散ったテーブルの破片と折り重なって、サフィラとサリナスが床に倒れ込んだ。



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