『でもよぅ』 あーちゃんの言葉が続く。
『店に行く途中でさ、もう2人、似たような葬式帰りっぽい奴らを見かけたんだよん。
黒づくめにサングラスっていう、前時代のイブツ的な2人』
あーちゃんが見たのは、J が男C、男D と名付けた2人である。
勿論、J の勝手な命名など、あーちゃんは知る由もない。
『だからさ、もしも前の2人の仲間だったりしたら、いや、どう考えてもそうだと思うんだけどね、
下手すりゃ4人相手になっちゃうだろ?
J の腕が立つのは知ってるけどさ、さすがに手こずるんじゃないかと思って。
いまだに戻ってないってことは、やっぱちょっと手ぇ焼いてんじゃないの?』
「手を焼く? あいつが?」 諛左は少し考え込んだ。
「そんなことがあるのかね」
『おやまあ、雇用主の腕前を信じてるってワケね』 あーちゃんは少し呆れ口調だ。
「信じてるんじゃない。知ってるだけだ」
『知ってるからこそ、疑ってないってことでしょ? そういうのを、信じてるって言うんじゃないの』
「さあ…どうだろうな」
諛左は曖昧に言葉を返して、一瞬、目をそらす。
いつも強気で怖じないこの男にしては珍しい反応だ。
しかし、視線はすぐにモニター上のあーちゃんに戻された。
「アーサー、J と別れたのは、いつ頃だ?」
『え? ああ……えっとねえ……』 いきなり問われて、あーちゃんは少し思案顔になる。
『うーん……1時間ほど前かなぁ。
俺はアリヲを送っていって、その後、ココに来たから……うん、そのくらいだと思うよん』
「1時間か。微妙だな」
だが、厄介事に首を突っ込むには、充分すぎる時間だ。
諛左は、小さくため息をついた。
「やっぱり、揉めてるか……」
『だとしたら、たぶん、いつもの場所だと思うけど。
ほれ、あんたンとこの事務所の近くにある、陰気な空き地。噴水のある』
「だろうな。あそこは J のトラブル・スポットだ。だが……」
諛左が言葉を続けようとした時。
ba-aaaaaaa-ang.g..g...g....... !
一瞬。
かすかだが、静かな夜を貫くように響く、乾いた炸裂音。
「……!」
思わず諛左は言葉を止め、窓の外に目を向ける。
突然、あらぬ方向を睨んで黙った諛左の表情に、
モニターの中であーちゃんが怪訝な視線を向ける。
『どした、ユサ?』
諛左の AZ もピックアウトにしてあるため、今の音は聞こえなかったようだ。
諛左はモニターに目を戻す。
「誰かが……近くで銃を使った」
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