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蝶になった夢を見るのは私か それとも 蝶の夢の中にいるのが私なのか 夢はうつつ うつつは夢


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使者は軽く眉を上げ、サフィラの顔を面白そうに見つめる。まるで新しい玩具を見つけた子供のようだ、とサフィラは思った。

「言うなと仰いましてもねえ……」

「やかましい」 使者の言葉をさえぎってサフィラは目の前の男の襟元をつかんだ。
「とにかく物事に尾ひれをつけて面白半分に触れて回るのはやめてもらうからな。どうもお前はそういうことを嬉々としてやりそうな顔をしている」

「王女、暴力はちょっと」

自分の首に伸びたサフィラの手に目を落とし、さすがに使者が表情を引きつらせる。
しかしサフィラは手を離さない。

「ほう、フィランデの使者殿はたいそう噂好きのようだが、ヴェサニールの王女は気短かで手が早いという噂は耳にしなかったと見える」

さらに手に力を込めて使者を引き寄せ、サフィラは低い声で囁きながら相手の目を睨んだ。

「だが、噂が事実の場合もあるんだぞ」

「そ、そのようで」 と、思わず使者が身を引いたとき。

カツン……と硬い音が二人の足元から聞こえた。何かが落ちたような音だ。
それに続いて、コロコロと床を何かが転がる音。

「?」

二人は一瞬顔を見合わせ、怪訝な顔で音の行方を目で追った。

ちょうどそのとき、隣の部屋から片手にティーポットを、片手に新しい茶碗を二つ持ったサリナスがむっつりと現われた。

「これを飲んだら、二人ともすみやかに帰ってもらうぞ」
と言いながらポットと茶碗を机の上に置いたサリナスの足元で音が止まる。

サリナスは足に当たった何かに気づき、それを拾い上げた。

「何だ、これは」

「あ」

サリナスの手の上にあるものを見て、使者が小さく呟いた。その声にサフィラはちらりと視線だけくれると、サリナスに手を伸ばした。

「サリナス、ちょっとそれを見せてみろ」

「お前のか、サフィラ?」 言われるままにサリナスはサフィラにそれを手渡した。

横から見ていた使者が慌ててそれを奪い取ろうとしたが、あいにくサフィラに襟元をつかまれたままで手が届かない。
サフィラは手のひらの中のものを間近に見つめた。

「銀星玉……」 サフィラは呟いた。

それは細い銀の鎖を幾重にも重ねた首飾りで、鎖の中心にはサフィラにも見覚えのある玉石が白銀の輝きを放っていた。


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